叔父さんの家といっても、一人暮らしだった叔父さんは、数年前に他界し、今は主のいなくなった空き家をサブローさんの従兄が管理している。
その日は、家の中には入らず、普段の生活とは、空気も、風も、感じる光さえも大きく違う草原で、春子と太郎は、しっかりと走り回った。
そして、夕方、帰ってくるなり、春子と太郎が
「おかあさん、おみやげ!」
と、小さな両手にぎゅっと握りしめた、野草を差し出す。
叔父の家は、少し離れたところにあるため、手の中の野草は、すっかりしおれ、しかも落とさないように、力いっぱい握って持って帰ったので、曲がりくねって、花が何色なのか?そもそも、花がついているのかどうかさえも、よくわからない状態。。。。
でも、春子と太郎が、私のために、一生懸命摘んできてくれた、野草。
「ありがとう。うれしい!花瓶に生けるね」
と言って、早速、とびきり小さい5cm足らずの花瓶(?)を探し出して、壊さないように、おそるおそる水に生けて、みんなが見える食卓の上に置いておいた。
そして、それから数時間もたたない、その日の夕食の時…
ふと見ると、なんとまあ、あれだけ、くしゃくしゃで、ぐったりとしおれて、植物とも思えない状態になっていた野草が、どれも頭をもたげて、茎をピンと伸ばし、どの花もしっかりと開いている…。
なんという生命力。
春子も太郎は、あんなにくしゃくしゃになっていても、
「これは花だ」
「お母さんへのおみやげの花だ」
と、それだけを一心に思い、「お母さんは喜ぶだろうか?」などと、決して迷うことなく、疑わず、握りしめて持って帰ってくれた。
その純粋さが、うれしい。
その純粋さが、ありがたい。
今日の写真は、そんな特別な、野の花。