明け方、テントの傍から撮影。 |
キャンプ場は、とても静か…
テントで寝袋に入って横になっていると、静まり返ったキャンプ場で聞こえてくるのは、虫の声だけ。
ブーーーーーーーンブーーーーーーーーーン
という、蚊、独特の、あの高音の羽音…。
それも、おそらく、何百匹もいるであろう蚊の、大量の羽音が、テントのすぐ外に響き渡っている。
本当に「響き渡る」という表現が、まさにぴったり。
高音のブーンブーンという音が重なり合った不協和音が、うなりながら響き渡っていた…。
春子は、「あの音は何?」としきりに言っていたけれど、ひと時も途切れることなく続く不協和音が、かえって子守唄になったのか?あっという間に眠ってしまった。
幸い、サブローさんの友人に借りたテントのスクリーンの目はしっかりと細かく、蚊が入ってくることもなく、無事に夜明けを迎えることができた…。
明け方になると、不思議とこの不快な不協和音は消えて、鳥のさえずりに変わっていた。
明け方、鳥のさえずりの中。。。
トン。トン。
ゴソゴソ。
なにやら、テントの外で音がする。
テントの中ではみんなまだ寝ていて、気が付いたのは私だけ。
どうも、テントの外に置いてある、プラスチックの衣装ケースの辺りで音がする。
衣装ケースの中には、朝食用のオートミールやネクタリンなどの果物、つまり食材一式が入っている。
クマの生息地域だったら、テントの近くに食べ物の入った入れ物を置きっぱなしで寝るなんてことは、絶対にしないし、ましてや、こんな物音がしたら、絶対に覗いてみようとは思わないけれど、ミネソタ南部のこのキャンプ場の辺りには、クマは生息していない。
「鹿かな?リスかな?」
そう思って、テントの端を少しだけ開けて覗いてみると、目の前にアライグマがいる…。
アライグマが、衣装ケースのフタの上に載って、一生懸命に、フタを開けようとしている。
でも、私の気配に気が付いたようで、さっと身をひるがえして草むらの中に走っていった。
走り去った方の草むらを、テントの中の隙間から除いてみると、草のかげでアライグマがこっちを見ている。
カメラ、カメラ。
…とまだ薄暗いテントの中をごそごそがさがさ。
カメラをやっと探して、もう一度草の影を見た途端に、アライグマは草むらの中に消えてしまった。
カメラに写っていたのは、草むらだけ。
そんなことをしていたら、まだ朝早いのに、すっかり目が覚めてしまった。
気が付くと、草むらの向こうに見える湖が、朝焼けの色に染まっている。
これはちょっとカメラを持って散歩してこよう。
カメラを持ってぶらぶら。
本当は朝日を眺めたかったのだけど、キャンプ場があるのは、西の端。
東側は湖ではなく、陸続きで、東の木が立ち並ぶ間から朝日が差してくるのが見えるものの、木々の向こうに行くには随分と歩かなくてはならない。
カメラと共に持ってきた地図を眺めてみても、どうにもいい場所が見つかりそうにないので、朝日を拝むのは諦めて、テント近くで、いい色に染まった湖面が見える木々の隙間から、雰囲気だけ撮影。
朝の空。
木の影と朝の色。
少し得した気分で一日が始まった。
レイク・シェテック州立公園(Lake Shetek State Park)の詳細はこちら(外部リンク)