2年ほど年前に何かのイベントで、春子と太郎がプラスチックのおもちゃのヘビをもらった。
昔の駄菓子屋さんとか、夜店などにありそうなヘビで、短い筒上のプラスチックをつなぎ合わせてあり、尾の辺りを持つと、本物みたいな動きをするヘビ。
春子のヘビはきれいな紫。太郎のヘビはきれいな黄緑。
でも、まだまだ幼なかった太郎は、扱い方が少々乱暴で、太郎のヘビはすぐにつなぎ目が折れてバラバラになり、直せない状態になってしまった。
その後、すっかりおもちゃのヘビの存在を忘れていたものの、先日、春子がどこからか自分の紫のヘビを見つけてきた。
太郎は、「ぼくもヘビで遊ぶ」と春子のヘビに手を伸ばす。
春子は、「ダメ、これは私のヘビ」
太郎「おかあさん。ぼくのヘビはどこ?」
私「太郎のヘビはね、壊れてしまって、直せなくなってしまったから、バイバイしたのよ」
太郎「…」
(しばらくしてまた…)
太郎「お母さん。ぼくのヘビはどこ?」
私「もうないのよ」
すると…
太郎(思いついたように明るい笑顔で)「お母さん。段ボールで作ろう!!」
私「あらまぁ。…それはいい考えね。じゃ、また時間があるとき作ろうね」
そして翌日
太郎「お母さん、段ボールでヘビを作ろう!!」
私「また時間があるときにね」
そしてまた翌日
太郎「お母さん、段ボールでヘビを作ろう!!」
…
とこれが数日続き、これはどうも太郎は諦めそうにない…と思い、さて、では作ってみようか?ということになった。
「今度は大事にしようね」
と話しながら、材料を探す。
ちょうど、トイレットペーパーとペーパータオルを取り換えたばかりで、やわらかめの厚紙の芯があった。
トイレットペーパーの芯を、くるくるとなるように少し斜めに切って、太郎に見せる。
私「できたよ~」
太郎「…これ違う。。。。怖いヘビみたいに動くのがいいの…」
…4歳は誤魔化せなかった…。
さて、…では、本気で挑戦してみましょう。
ペーパータオルの芯を短く切って、こんな具合かしら?と思いつつ、作ってみる。
糸でつなげるために、事前に千枚通しで、両端に穴を開けておく。
できるだけ手間をかけないように、長い糸を切らずに穴に通しながら、短い筒をつなげてみる。
なんと…つなげただけでは曲がらない。
どれどれ…と、ちょっと切り込みを入れてみる。
なかなかうまく動かない。。。
一か所だけ糸でつないで試験的に動かしてみる。
おお、これなら動きそう!
うん。まがるまがる。
…と…ここで、材料がなくなってしまった…!
ヘビにしては、今一つ短くて雰囲気に欠ける…。
そこで目に留まったのが、さっき却下されたトイレットペーパーの芯で作ったヘビ。
これをしっぽにしよう。
おお、いい感じ。
持ち上げでみると、動く動く、本物のヘビのような動き!!
近くで遊んでいた太郎が早速やってきて、
「僕が顔を描く~!怖い顔にする!」
と張り切って「怖い顔」を描いてくれた。
私が「上手に描けたね~!ほら、もってごらん、本物みたいに動くよ~」
と言って動かして見せながら手渡そうとすると、急に太郎の顔がこわばり、手を出して受け取るどころか、手を後ろに回してしまった。
そして…
「ヘビ…こわい…」
と一言言ったきり、出来立てほやほやのヘビには見向きもせず、あっちにいってしまった…。
それから、太郎はヘビのことは全く話さなくなり、母の力作のヘビで遊ぶ様子もない…。
…久しぶりの母の力作は、力作過ぎたのか…?!
この際、このヘビを「リキ作」と名付けようか…。
今、ヘビのリキ作は、紙で作ったおもちゃばかりが入ったおもちゃ箱の中で、冬眠している…。